01/25 (木) 民映研×塩屋 vol.21 ドキュメンタリー映画上映会「正月行事」

「私たちが生を受けた日本列島に生きる 庶民の生活と生活文化を記録する」
姫田忠義|民族文化映像研究所|ドキュメンタリー映画上映会

【 上映作品 】

民映研作品 no.108「新島の年中行事 ー 正月行事」
民映研作品 no.113「七島正月とヒチゲー ー 鹿児島県十島村悪石島」

日時:2024年1月25日 (木) open 19:00 start 19:30
会場:旧グッゲンハイム邸(JR / 山陽塩屋駅徒歩5分)
   神戸市垂水区塩屋町3丁目5-17
料金:一般 1,800円 大学生・シニア 1,200円 小・中・高校生 500円
主催:NPO法人ヒューマン・ビジョンの会
共催:塩屋音楽会

予約・問い合わせ:旧グッゲンハイム邸
TEL : 078-220-3924 FAX: 078-202-9033
E-mail : guggenheim2007@gmail.com

* ご予約送信の際に、ご希望の鑑賞日、氏名、電話番号、枚数を明記下さい。
* こちらからの返信をもって予約完了とさせていただきます。
* 火曜日水曜日が休館日のため、メールの返信は木曜日から順になります。


「新島の年中行事 ー 正月行事」民映研作品no.108
(東京都新島村本村・若郷・式根島1997年|34分)

新島には、古い畑作文化や海洋文化を髣髴させる古風な正月行事が伝えられている。一二月、お正月を迎える準備が始まる。潮で清めた藁で年縄を作る。蓬とさつまいもを搗き混ぜたクサーナ餅もでき、船の舳先近くにつける波除けと同じ形をしたニクサリが神棚に飾られる。新年にやってくる歳神様を迎える歳棚を天井の梁から吊るし、吉方に向ける。各家の竈神や水神には家の当主が、各神社には当番が注連縄やお飾りを飾る。

大晦日の夜。ディ(仏壇と床の間のある奥座敷)に注連縄を張り巡らし、歳神様を迎える。氏神、恵比寿様、竈神、吉方なども拝む。

元旦、若水汲み。若郷では共同井戸から水を汲み、新年のお湯を沸かし、神棚に若水、仏には若水とお茶を供える。浜では漁師が波に洗われた砂、潮花をとり、浜や船、家の北側にあるナンバドコロ(初漁の魚をまつるところ)に供える。二日、船の初乗り行事。船主は潮花を船に供え、乗り子と神酒を交わす。ミカンをまき、無事と大漁を祈る。三日、十三社神社での御籤神事。御籤を引き、一年の吉凶を占う。四日夜、サカムカエ。大三王子神社でお籠りを終えた十三社神社の神官を、ヤカミ衆とよばれるウンバァや若衆が村境まで迎える。五日、畑仕事の始まり。畑を拝んで回る。七草粥のための野草摘みもする。六日、消防組による出初め式。七日、七草粥。七草と七つの道具を用意し、心の中で唱え言をしながら粥をつくる。
一五日、正月行事の終わり。餅を搗き、竹に刺して飾る。シーラダンゴとよぶ。赤ちゃんの初年の祝いもこの日にされる。一六日、歳神様の棚を納める。新島では「正月飾りは一月二四日のカンナンボーシ(海難法師)の風にあてるな」と言われ、二○日を過ぎる頃までにはお飾りは浜や畑で燃やされ、正月が締めくくられる。

「七島正月とヒチゲー ー 鹿児島県十島村悪石島」民映研作品no.113
(鹿児島県鹿児島郡十島村悪石島|1998年|42分)

激しい西風が吹き荒れる旧暦十一月から一二月にかけて、吐噶喇列島では、ひと月早い正月行事が行われる。オヤダマ(先祖の魂)を迎え祝福する七島正月、髪を敬い畏れ慎むヒチゲー行事を悪石島で記録した。

[七島正月・先祖の正月]十一月一四日セツギムケー。各家々では、ユズルという木の枝と榊の枝を戸袋にさす。二九日、オヤダマおろし。夕方、位牌等、仏壇のものを全て床間に移す。三○日(大晦日)、朝。縁側の上がり口に大根等の野菜でカケナを設え、オヤダマ様が出入りするためにトンビンタ(戸の頭)を少し開けて、先祖と無縁仏(ホウケシジョウ)の膳を供える。この日から送りの日まで、膳は毎朝夕替えられる。その晩、オヤダマ様にカエヨを歌い、各家の男総代宅で歌ナラシをし、夜を明かす。一二月一日(元旦)の夜、総代宅で千本焼酎祭。各家の男が持ち寄った餅と笹で清めた焼酎が、祈願され、祝宴・歌ハジメとなる。オヤダマ様を迎え、歌で祝福し、島人は一体となる。二日は、船の安全と無事を神に願う船祝いが行われる。そして六日の夕方、女性司祭者ネーシの身体にお立ちのお知らせがくると、各家で先祖立てが行われ、オヤダマ様は、南西の断崖風下を通って旅立つ。

[ヒチゲー・神の正月]ヒチゲーとは島中の神々が村に集まる日のことで日常と違う日(日違い)という意味である。初の午・未の日のコマヒチゲー(細かい日違い)は神様の洗濯日で、村人は静かに身を慎む。一二月二六日、オオヒチゲー(大きい日違い)。各家々では、悪いものが来ないよう、数日前から家の出入り口に魔除け・イバシカケをし、芭蕉の繊維でフ結びを作り首にかける。当日早朝、村人は、浜で身を清める。神役が祈願した後、ホンボイと浜のホーイが、神様の通る道を清めてまわる。翌日まで村人は外出せず、消灯し、静かに過ごす。但し夜のネーシ宅でカミコウダツ(神のお告げ)だけは聞きに行く。翌日、神役の祈願によって、村人は元の生活に戻ることができる。

姫田忠義(ひめだ ただよし) 記録映像作家・映像民俗学者

1928年(昭和3年)兵庫県神戸市生まれ。旧制・神戸高商卒。
1954年、民俗学者の故・宮本常一氏と出会い、その影響を受けて日本全国を歩き始める。
1950年代後半より、映像を手段とする記録作業を開始。
1976年、民族文化映像研究所を設立し、2012年まで所長を務める。
2011年、開校と同時に日本映画大学・特任教授に就任。「民俗学」を担当する。
2013年7月29日午後9時55分 横浜市の病院にて「慢性閉塞性肺疾患」のため死去。84歳。7月31日家族のみにて火葬葬を執り行う。

庶民の生活と生活文化を、映像による手段を使い記録作業を50年以上にわたり続ける。
≪「基層文化」=大自然に依拠しつつ暮らす、人間の精神文化≫をテーマに、
120本を超える映画作品を発表。代表作に「アイヌの結婚式」「イヨマンテ」、「越後奥三面 ~山に生かされた日々」(1986年シカゴ国際映画祭ドキュメンタリー部門銀賞)。

1989年 フランス政府より芸術文化勲章オフィシエ叙勲

使用されている画像すべて©民族文化映像研究所

塩屋音楽会, 映画上映|2024.01.25

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